・・・ 般若心経の一節
幽霊も お化けも 人の心に出るものである
<解説>
武士道の何たるかを説いた話にこんなのがある
ある武士のところに 毎夜幽霊が出た
ところが 武士はいっこうにこわがらないばかりか ある夜のこと
「おまえは まだおれに恨みをいだき成仏できてないのか ザマーミロ」 と
幽霊をどなりつけた それから幽霊は出なくなったという
幽霊は こわい こわい と思う人の心に出るものである
幽霊に向かって 「ザマーミロ」 と言ってのけるような人の前から
幽霊が消えてなくなるのも道理なのだ
まして 「般若心経」 の説く 「空」 の立場からみれば
この世のものは全て私たちの心が作り出した 「幻」 である
幽霊など 幻のまた幻で この武士のように 「ザマーミロ」 と
言うほど不遜になる必要はないが 恐れる必要もない
「無有恐怖」 つまり そもそも恐れるべきものなどないのである
たとえば 引っ込み思案な人は 人前に出るのが こわいという
じゃあ 「これが わたしのこわい “人前”です」 と出して見せられるか
私たちは つまらぬ幻や幽霊から もっと自由になる必要がある
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