アングリマーラという青年は 九十九人の男女を殺して殺人鬼と憎まれた
のちに彼は釈尊に説諭されて弟子になり 托鉢に街を歩いたが
どこへ行っても住民の罵声を浴び 石を投げつけられたのである
毎日 血まみれになって帰ってくる彼に 釈尊はただ 「耐え忍べ」 とだけ言い続けた
その教えを守ってアングリマーラは さらに托鉢を続け 迫害に耐える日々を送った
人間はともすれば 迫害から逃れようとする
しかし逃げてはならない 逃げればどこまでも追ってくる
どんなに辛く苦しくとも その場に踏みとどまり 雄々しく迫害を受止め
ひたすら耐え忍ぶことによって
「業報(ごうほう)」
つまり おのれの業の報いを清算する覚悟が必要である
われわれはむろん殺人鬼ではない
けれども 自分では気づかずに いつかどこかで罪を犯しているのである
業への報いに対して 決して逃げることなく立ち向かわないと そこから脱することはできない
自分の責任を回避しようとしても その責めはいつまでもついて回るであろう