「仁王禅」で有名な鈴木正三が 正月に別の禅院を訪れたとき
家々を回って祝儀をもらう万歳がやってきた
その禅院の主人は 「もう前に何人もきたから帰れ」 という
正三は これを聞いて 「総じて世間というものは 互いに助け合って過ごすもの
わたしも世間のおかげで生きているのに 人をそうさせないというのはおかしい
わたしも十銭を出すから どうか万歳をやらせてやってくれ」 といった
主人は おおいに感心して 万歳に舞うことを許したという
禅といえば 悟りすました娑婆っけのないものという印象があるが
実は 人情の機微を尊ぶものだ