実力のない者は 自分の実力を評価できない
<解説>
ある大学で試験の答案を返却した直後に 一人の学生が 「自分の成績に異議がある」 と抗議した
その学生の言い分は こうだ
「ぼくはB君とほぼ同じような答案を書き 決して遜色はないはずだ
それなのに 彼が合格で ぼくは不合格か」 と
わたしたちは彼の抗議を聞いているうちに ふと法眼禅師のあるエピソードを思い出した
あるとき 修行中の二人の僧が 呼ばれて禅師の部屋に行った
二人を見た禅師は 部屋にかけてある二枚の簾を黙って指さしたのである
ともに立ち上がった二人の僧は 簾を一枚ずつ巻き上げたのだが それを見ていた禅師の言葉は
意外にも 「一得一笑(いっとく いっしょう)=一人は良いが 一人は悪い」 というものであった
ある人間には まったく同じように感じられる物事でも 悟りの境地から見ると
一方は是で 一方は非 というケースは決して珍しくはない
冒頭の学生の場合も 使っている字句とその配列は友人とほぼ同じであっても
わたしたちの目からすると まったく意味内容の異なる 「似て非なる」 答案であった
つまり実力のともなわない人間が 形だけ他人を真似てみても
見る人が見ればすぐに底が割れるということだ
|