恨むも恨まれるも この世のことにすぎない
<解説>
凡愚がうごめく浮き世では 人が人の足を引っぱったり つまらぬ争いの絶え間がない
やられた者はやり返し 恨みは積もるいっぽうである
夢窓国師(むそうこくし)は あるとき酔っ払いに撲られ 額を割られたことがあった
こらしめてやろうと気負い立つ連れの者を静止して
「打つ人も打たれる人も如夢幻泡影(にょむげんほうよう)如露亦如電(にょろやくにょでん)」
と言った
しょせんは 撲るも撲られるも うたかたの世の出来事 取るに足らんことだわい
というのである
われわれ凡夫も 願わくば このくらい泰然としていたいものだ
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