人はひとりで 生きているのではない
<解説>
わたしたちがたぶん何気なく使っている 「縁起」 は もとは仏教思想からでたことばである
「こいつは春から縁起がいいや」 というときの縁起は 「おめでたいことの兆候」 をいうが
本来の意味はまるで違う
「縁起」 は 「この世のさまざまな事象は すべて“他”とのかかわりでのみ存在・生起する」
ことを言いあらわす
「他」 との関係も持たずに存在するものがあるだろうか
たとえば 自分と他人とのあいだにしても 他人がなければ自分は存在しない
夫という存在がなければ 妻は存在しない
子供がいなければ 親という存在はありえない
このように すべてのものは 他との関連のうえにおいて存在しているというのである
存在ばかりではない わたしたちが経験する苦しみ 悲しみ 喜びは
「因果応報」 の結果である
その結果は わたしたちが自ら種をまいた過去の原因に生起している
ただ わたしたちには 複雑にからんだ因果の糸が見えないだけである
縁起とは 文字どおり 「縁」(因縁) によって関係が生じることだから
「因縁をつける」 のは人間が生きるうえで不可欠のことなのである
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