金を持てば 金に対する執着が生まれる
<解説>
仏道修行を徹底するには出家するにこしたことはない
家族がいて家があり 財物があって親戚づきあいもあるとなれば
さまざまなしがらみにしばられ とてもわが身ひとつで修行のみに専念するようには まいらない
在家にいて修行を積むのはむしろ困難なことなのである
聖書の中には 富んだ者が天国に行くのは
ラクダが針の穴を通る以上にむずかしいということばがある
持てる者ほど財物への執着は強いからだ
僧は 三衣一鉢(着衣と托鉢の鉢)のほかは何も持たず 衣食住への執着を一切断つのだから
その点だけでも在家の修行者は なかなか出家者にはかなわない
ただし 龐(ほう)居士という人は 在家でありながら 出家者を凌ぐ人物として
「正法眼蔵随聞記」 に記されている
この人は 初めて参禅するときに 家の財宝をすべて海中に投げ捨ててしまった
周囲のひとは 人助けなり寄進するなり 使い道はいろいろあろうに・・・と言ったが
龐は 「自分のために悪いと思って捨てる物を なんで他人に与えられるか」 と反論した
その後は ザルを編んで暮らしを立てたという
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