お 経 の 話U

 
<参考文献>
 
                        * 「般若心経現代語訳」 東福寺派本願寺 ・ 稲栄和尚 (S10年)
 
                        * 「一切は空 ・ 般若心経」 天竜寺管長 ・ 平田精耕著 : 集英社
 
                        * 「般若心経」 妙心寺派龍源寺住職 ・ 松原哲明著 : 三修社
 
                        * 「般若心経」 ビギナーの為 ・ 遠藤誠著 : 現代書館
 
                        * 「こだわりを捨てる ・ 般若心経」 ひろさちや著 : 中央公論社
 
 
 
 
 

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 [5]   度  一 切  苦 厄
 
【経文】
 
度 一切 苦厄
 
【読み方】
 
ド イッサイ クヤク
 
【現代語訳】
 
一切の苦厄を度したまえり
 
 しがらみに捉われる 「自分の体と心も 自分以外も」
 
 そもそも その実体はないのだ (一切は空) と 腹に収めておけば 
 
 その人は全ての苦から解放される
 
 頭で判っていても体 (行動) が伴わないが 
 
 もどかしさ (こだわり) を超える努力が修行である
 
 そこで一切の苦しみ災厄を克服されたというのである
 
 
<解説>
 
今回のキーワード 「(肉体) も心 (精神) もない
 
「五薀」 の一つ 「色」 が人間の肉体を意味し「受 ・ 想 ・ 行 ・ 識」 が
 
人間の精神ですから 「肉体と精神」であり 
 
後になり 「色」 は 「すべての物質的存在」 を示す言葉になった
 
だから五薀とは 「あらゆるもの」 と解釈しておくと この先の話がわかりやすい
 
観自在菩薩は般若心経を実践して「すべては“空”だ」との悟りに到ったのである
 
般若心経では 「空」 の一語が重要で その 「空」 を説明するために
 
あえてここでは 「縁起」 という言葉から入りたい 「空」 とは 実は 「縁起」 である
 
釈迦は 「われを見る者は縁起を見る 縁起を見る者はわれを見る」 といい
 
説法の都度に 弟子たちへ繰り返し この 「縁起」 を重視して教えた
 
では 縁起とはなんであるか?
 
端的に示せば 「相互依存関係」 といえる それが縁起である
 
“縁起” の語を分解すると 「縁 (ヨ) りて起こる」 の意味で 
 
他のものに縁りて (依存しながら) 存在している
 
たとえば3mの棒は「長い」か「短い」か? 隣に1mの棒があれば「長い」 というが
 
隣に5mの棒があれば 「短い」 という 
 
単に比較して長い短いといっているに過ぎない
 
これは 相互に依存しあっているからで ものには物差しはない
 
人がいつも物差しで判定 (差別) をしているに過ぎない
 
「空」 に物差しはなく 真理に物差しは不要だという
 
 
ある高校で全校マラソン大会があり 「ヨーイ ドン」 でスタートしたが
 
全員が歩いて走らなかったそうで 先生は「何しているか 走れ走れ」 と叫んだが
 
学生は最後まで歩き続けたという
 
全員が同じである必要ないということ そこには一位も二位もない
 
今の教育は すべてのことに物差しを当てる 「因果」 に執着しているからだ
 
それは 「因と縁」 の区別がついていないから(大人の都合だけで)
 
結果判定したがる
 
人と人の 「縁」 がすべての条件 (源) となる
 
良いも悪いも 「縁」 次第やから 自由な行動から 「因縁」 を体得させることが
 
本来的教育である  「走る ・ 音楽する ・ 英語する等」
 
いろいろある中で自分がやりたいことをやらせる
 
少し自由な考え方があれば学校教育はバラ色であるはず
 
強いものと弱いものを競争させる 
 
これが 「弱肉強食」 の非人間社会につながっている
 
地球上の万物は節操なき競争で生存することはできない
 
これまで地球の安定は 「相互が補完関係」 にあったからで 
 
決して 「単なる弱肉強食の競争原理」 ではなかった
 
釈迦は万物が仏と説き 万物が相互依存関係にある 「縁起」 を説いた
 
「般若心経」 が 「空」 といっているのは この 「縁起」 である
 
従って 「観自在菩薩が般若波羅蜜を実践されて五薀がみな “空” であることを
 
照見され あらゆる苦しみを克服された」 というのは
 
観自在菩薩が この縁起的なものの見方を身に付けられたということである
 
だから我々も 観自在菩薩と同じように 「空」 即ち縁起的なものの見方によって
 
全ての苦しみ楽しみ悩みを全て克服すべきです
 
苦しいから やけ酒を飲んで紛らわそうとする解決法は 
 
仏教徒のとるべき態度ではない
 
仏教徒は仏教徒らしい解決方法をとるべきである
 
その解決方法は章を改めて解説する
 
 
 
                                   2006年7月2日
 
 
 
 



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