【経文】
依 般若波羅蜜多 故
【読み方】
エ ハンニャハラミタ コ
【現代語訳】
般若波羅蜜多に依るが故に
雲の上の菩薩ならずとも 良いことをする衆生にも
般若波羅蜜多に依ることが出来るようになる
<解説> 今回のキーワード 「菩薩」
ふつう菩薩というと如来の一種と思われるが 冒頭に出てきた観自在菩薩は
観音菩薩だし 他にも○○菩薩が多々ある
もともと仏教で菩薩とは 雲上の超越的な形ではなく 我々人間のことを言う
人間とは言っても 朝起きて ・ 食事して ・ 仕事して ・ 帰ってまた食事して ・ 寝て
翌日が来るというような ケモノと同じ生活をする人間のことを菩薩とは言わない
そうではなく お釈迦さまのように 道を求めて よい行いをして
悟りに向かっている人間のことを 「菩薩」 といった
だから今この文章を読む皆さんも すでに菩薩である
そして ここに出てくる菩提薩土垂は 正にそのような意味での菩薩でして
要するに仏道を求めている皆さん方のことなのです
そして そのような皆さん方が 何ものも得ず また 何ものも得ようとしなければ
誰でも 「般若波羅蜜多に依ることが出来るようになる」 のであります
ところで 「人間の肉体を受けて現世に来て救済する」 というのは
大乗仏教の特色です 小乗仏教の世界では菩薩というのは やかましく言わない
常に仏の世界だけが問題になる
しかし大乗仏教では 仏の世界に落ち着いてしまっては本当の仏ではない
本当の仏とは肉身を受けてこの世に現れ この世の一切の人を救おうとする
そういう人が本当の仏 「化身仏(けしんぶつ)」 といわれる
釈迦が入滅の間際には 弟子たちが大変に嘆き悲しみながら
枕辺でお別れを述べた 一人の弟子が釈迦に
「あなたは不滅の真理を悟られたのに なぜ今 滅してゆくのか」 と
すると釈迦は 「私には三つの体がある 一つは法身仏(ほっしんぶつ)
もう一つが報身仏(ほうじんぶつ) 次は化身仏(けしんぶつ) である
今滅してゆくのは 化身仏に他ならない 本当の私は法身仏であって
生まれることも死ぬこともない」 と
それを聞いた弟子たちは感動して涙にむせんだという
滅することのない法身仏が肉体を受けてこの世に現れてくる
これを化身仏と呼ぶ 正にこの菩提薩土垂は 化身仏を意味しているのである
2007年6月13日
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