学道の人は 自解(じげ)を 執(しゅう)することなかれ
どんなにいい考えだとしても もっといい考えがある
<解説>
学問の世界は ある意味でたいへん恐ろしい世界である
成果を世に問うには 完璧か完璧に近いものでなければならないし
同学の人の厳しい批判にも答えなければならない
そのうえ 学問は日進月歩であるから 今まで長い年月をかけて取り組んできた研究が
一瞬ののちに反故同然となるかもしれない
それゆえに 自分の説のみが正しいと突っ張る態度はよくない
といって 自信をもたないのはもっと悪い それゆえに 恐ろしい世界だというのである
道元禅師は 「正法眼蔵隋聞記」 の中で
禅を勉強する人はどんな態度でのぞむべきかを語っている
----「学道の人は自解(じげ) を執(しゅう) することなかれ
設(たと)ひ会(み)するところありとも 若し 亦決定(けつじょう)
よからん事もあらん 亦是よりもよき義もあらんと思ふて
広く知識をも訪(おとな)い 先人の言をも尋ぬべきなり
亦先人の言うたりともかたく執する事なかれ
若しこれもあしくやあるらん 信ずるにつけてもと思いて
次第にすぐれたる事あれば其れにつくなり・・・・」
道元禅師は繰り返し 一つの説にこだわるな と言っている
どんな権威のある人の業績でも よりよい説があれば乗りかえなければいけない と
学問の厳しさを述べている
肩書きほしさに教授の言いなりになっている現代の研究者に読んでもらいたいものだ
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