同じ現象が異なって見えるのは 見る側の心が動いているからだ
<解説>
人間の価値判断の基準など じつに曖昧なものである
たとえば某社の受付に ツンと澄ました美人がいる
男たちは 「高慢でいやな女だ」 と思っているが
その中のひとりがバレンタインデーに その美人からチョコレートを贈られたとしよう
とたんに彼の彼女に対する評価は一変するはずである
「ツンとしているのは 美人だからそう見えるだけなんだ」 とたちまち思い直すことだろう
しかし彼女自身は以前と少しも変わっていない
彼の心が 「二人の彼女」 を勝手につくり上げてしまっただけなのだ
中国 ・ 広州の法性寺に 印宗法師という禅の学僧がいて 「涅槃経」 を講じていた
この寺では 印宗法師が講義する日に 幡を立てるのがならわしだった
ある日 その幡が風にひらめいているのを見て 二人の僧が議論を始めた
一人は 「幡が動く」 と言い もう一人は 「幡ではなく 風が動いているのだ」 と主張した
二人は口角泡を飛ばして自説を譲らなかった
するとそこへ慧能禅師がやってきて 言下に言った
「幡が動いているのでも 風が動いているのでもない
動いているのはお前さんたちの心だよ」
これを聞いて二人の僧は議論をやめ たちどころに悟ったという
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