・・・ 般若心経の一節
きのうのことは きのうのことである
<解説>
禅者はひたすらに 「今」 を生きる 一瞬の過去も 過去はすでにない
過去にこだわることは 物に執着するのと同じである
ある老僧が弟子達と旅をしている時 川岸で一人の女に出会った
女は対岸へ渡ろうとしていたが 頼る人がいない
そこで僧たちに 「あたしを抱いて向こう岸へ渡しておくれ」 とすがった
出家者が女体に触れるは禁物である 弟子達は皆が背を背けたが
師匠の老僧は 「ああ よしよし」 と気軽に引き受けて女を抱えて悠々と川を渡った
女と別れた後に弟子は師匠を詰問した 「女を抱くとは何事ですか」 と
すると師匠は こともなげに言ってのけた
「なんと お前たちはまだ女を抱いておったか おれはとっくに降ろしてきたぞ」
女という存在にこだわっていたのは 弟子達であった
和尚にとっては すでに過ぎ去ったこと もともと 「女」 という存在すらなかったのである
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